変体構成にプロデューサーのこだわりが光る「ポスト聖子」コンピレーションCD
日付:2021/10/27
1:1枚に収まらない「SEIKO FOLLOWERS」
SEIKOに続けと夢見たアイドルたち
「夢見た」と過去形になっているところがなんとも哀愁漂うテーマに沿って80年代アイドル3人の、合計21曲を集めた 高橋美枝・渡辺千秋・村田恵里 シングル・コレクション 。今回はそんなちょっとマニアックな80年代アイドルの曲を聴きながら、このCDのこだわりポイントを見ていこうと思います。
アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 高橋美枝・渡辺千秋・村田恵里 シングル・コレクション 新品価格 |
筆者は村田恵里「オペラグラスの中でだけ」が入っているCDがこれしかなかったという理由で内容をよく見ずに購入したのですが、曲目リストを見るとなんか変です。というのも2枚組なのにDisc2が1曲しか入っていないです。
どういう事かと思って開封すると、なんとDisc2だけ8cm CDで本当に1曲しか入っていないんですよね。こんな「12cm CD+8cm CD」という変体構成を誰が想像できただろうか…
どう頑張っても74分しか入らないCD-DAに微妙に入りきらなかったから8cm CDを付けた、ということでしょうけどそこまでして高橋美枝「ジェラシーあげます」を入れたかったプロデューサーの熱意がひしひしと伝わってきます(というか8cm CDって今でも生産してるんだな)。
まあ、そんなコスト度外視な企画の結果…なのかは知りませんがこの「アイドル ・ミラクルバイブル」シリーズ公式HPはとうの昔にクローズされ、現時点で購入可能なのは2つだけです(Wayback Machineにアーカイブが残っていて感動しました。「年末恒例」って書いてあるので毎年ラインナップが変わっていたみたい)。しかし、過去に再プレス販売が行われたようなので根強い人気はあるのかも。というか2005年発売のCDが今も販売されていることが凄いのか。
2:「カラー・ジャケット復刻」は最高!
そんな感じでまさしく「ファンによる、ファンのための」という印象が強い本作品ですが、こだわりは付属のブックレットにも感じられます。まずは全曲カラー・ジャケット復刻。これはアイドル歌謡のCDなら絶対に欲しいですよね、というか筆者はジャケット写真のためにCDを買っているといっても過言ではないです。
ジャケット写真は特に時代の雰囲気を感じられるので最高です。歌詞が載っているのもありがたい(なぜか楽譜も載っていました)。こういうマニアックな曲になるとネットにすら歌詞データがないですから。
あと解説がついているのは嬉しいですよね、当時の情報や曲の裏側を知ることができてより深く曲を楽しめますから…ってこの狂気じみた変体少女文字を2005年になってもなお書いている「坂本ちゃん」って誰だ?と思い、ブックレットに載っている「坂本ちゃん日記」のURLをWayback Machineに入れてみると…
…すみません、私の理解の範疇を超えたのでノーコメントでお願いします。
3:ダジャレかよ
再び曲リストに戻り、曲について見ていきましょう。冒頭にも書いたようにこのCDのテーマは「SEIKO FOLLOWERS」、即ち「ポスト松田聖子を目指したアイドルたち」です。残念ながら筆者は松田聖子の曲をあまり知らないのですが、どことなくどっかで見たことがあるような曲が並んでいる印象を受けます。
例えば、渡辺千秋のデビュー曲「夏にフレッシュ。」。これを見ると即座に松田聖子「夏の扉」(1981)が思い浮かびます(「フレッシュ フレッシュ フレ~ッシュ♪ 」のやつ)。もっとも、「夏の扉」は化粧品「エクボ ミルキィフレッシュ」のCMソングだから「フレッシュ」という単語が使われているわけですが、あんまり歌詞に「フレッシュ」って使わない気がするのでこれは偶然の一致ではないはずです。あとなんで最後に句点(。)がついているんですかね、句点をつける文化は「モーニング娘。」からだと思っていたのですが…
とか思っていたら解説の方も同じことを述べられていました。やっぱみんな考えることは一緒だな。
そういえば「エクボ ミルキィフレッシュ」の「ミルキィ」をねじ込んだ松田聖子「風は秋色」の「ミルキィスマイル」ってどんな笑顔なんですかね。こういう昭和CM歌謡の無理やり感も面白くて大好きです。
それ以外にも高橋美枝「ダブル・デート」(1984)を見ると、同じ80年代の曲として
- 河合奈保子「ダブル・デイト」(1983)
- 岡田有希子「ファースト・デイト」(1984)
なんかが思い浮かびます。どことなく似たような曲が多いのは「横並び」の時代、昭和を表しているような。
そんな既視感のある曲のなかで一際目を引くタイトルが1つ、それは
高橋美枝「OH!多夢」
秋をテーマにした曲ですが、要は「秋(Autumn)」と「たくさんの夢(多夢)」」をかけているわけです。まあ言ってしまえばダジャレですが、逆によく思いついたなと感じます。あと「読書の秋しちゃ いられない」という歌詞が印象的です。
4:昭和アイドル歌謡ファン必聴の1枚
というわけで、選曲はマニアックではあるものかくれた良曲が数多く収録され、こだわりが光る昭和アイドルファン必聴の1枚と言えるでしょう。あと、やっぱりアイドル歌謡は物理メディアで買うべし!