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昭和歌謡好き大学生の雑記
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T.Ueda

電子機器と昭和歌謡を愛する理系大学生

ガイドラインを遵守しつつ、EVコンセントをDIYで設置する

日付:2022/10/08

1:こだわったのは「コンプライアンス」

evコンセント 設置後

 今回は

自分でやれば人件費ゼロ

という禁断の理論に基づき、EVコンセントをDIYで設置する話です。なお、かかった費用は約2万円でしたが、お察しのとおり手間を考えれば割に合わないので普通に業者に依頼することをお勧めします。あと、もちろんですが今回の工事を行うためには第二種電気工事士の資格が必要です。

 今回の工事にあたり最もこだわったこと、それは見た目でもコストでもなくコンプライアンスです。というのも、EVの消費電力はMode2充電時でも3kW程度と住宅設備の中でトップクラスであり、かつ大電流が長時間流れ続けるため施工には特別な配慮が求められます。ましてやDIYでの施工に不備・不適切個所があり、それが原因で家が燃えたなんてことがあったら一巻の終わりです。

ガイドライン

 先述したとおりEVコンセントは従来の屋内配線とは異なり特殊性の高い回路となります。また、筆者は「ペーパー電気工事士」なので施工経験がありません。そこで、「なんか教科書的なものがほしいな~」と思って見つけたのがこちら

JWD-T33:EV普通充電用電気設備の施工ガイドライン

JEWA HP

これは配線器具に関する研究・ガイドライン制定等を行っている業界団体である「日本配線システム工業会(JEWA)」が発行しているEVコンセントに関するガイドラインで、概要は国土交通省の資料で確認できます(画像はJEWAのHPより)。

JEWA 技術資料 購入方法

で、「個人でも買えるじゃ~ん」ってことで筆者はこれを速攻で購入。価格は1500円+送料、注文方法はメールかFAX。絶対に個人で買うもんじゃないけどメールを送ればすぐに発送してくれました(おそらくその辺の電気屋も持ってない)。内容は…まあ別に面白くはないですがEVコンセントの具体的な施工方法が内線規程と照らし合わせながら豊富に例示されていたので結構便利でした。気になる方はぜひ日本配線システム工業会に注文してみましょう。

というわけでここからは、このガイドライン(以下、単にガイドラインと呼称)およびうろ覚えの各種法規と照らし合わせながら法やガイドラインを逸脱しない施工計画をたてていきます。

Q:内線規程は買わなくていいの?

A:14版が出たら買おうかなと思っていたのですが全然出ないし、あと高かった(約5000円)ので許してください…

2:「エアコン用配線の流用」はOKか?

 ではここからは具体的な施工計画を立てていきます。まずは通線ルートの確保ということで配電盤裏にある天井裏点検口を覗いてみたのですが…

  • 点検口の周囲は太い梁に囲まれていてほぼ侵入不可
  • 点検口から車庫までは距離があるため通線ロッドを使っても通線はきびしそう

というわけで天井裏転がしでの新規通線は(少なくとも素人には)極めて困難であることがわかりました。

エアコン用コンセント

そこで目を付けたのが車庫に面した部屋にある使用していないエアコン用コンセント。これは100Vですが20Aコンセントかつ専用回路(ブレーカー1つにコンセント1口のみ)なのでEVコンセント用に配線を流用できるんじゃないかと考えたわけです(100V→200Vは専用回路なら可能)。おあつらえ向きに貫通穴までありますから、そこから配線を外に出せば楽なんじゃないのかと。ちなみに、真ん中にある謎の穴はハウスメーカーが間違えて開けた穴です。

ただ

そんなことしていいの?

という素朴な疑問があるわけです。そこで、この配線を流用することはコンプライアンス的に問題ないかを検証することに。

2-1:既存配線の劣化

 まず初めに気になるのは既存配線の劣化。何せ20年ものですから、それを大容量回路に使っていいものかという疑問があります。

 これについては、少なくとも配線の「使用期限」は明確に定められているわけではないですから即座に違法とはならないと考えられます。
 一方で、使いまわす際は配線の劣化の簡易的な診断として絶縁抵抗の測定くらいは実施したほうがよいと考えられますが、絶縁抵抗計は高価なのでDIYでは厳しいです。したがって、万が一配線の劣化が原因で事故が発生した際は「配線の劣化の判定を怠った」として責任を負う必要があるかもしれません。

 しかしながら、この配線を新たに引き直したところでそのほかの配線は全て古いままですし、何なら全ての電流が集中する引き込み線や幹線も古いままですからコストや手間に見合う意味はないと判断し、既存配線の流用を決定。

2-2:既存配線の許容電流

 次は既存配線の許容電流について。今回設置するEVコンセントは200V20A、既存配線はVVF2.0(許容電流23A)なので大丈夫…と言いたいところですがそう簡単にはいきません。

まず、ガイドラインではVVF2.6での施工が推奨されています。しかし、これはあくまで将来の6kW充電器への対応のためであり、今回のように3kW充電器でありかつ配線を引き直せないという「やむを得ない事情」があるためVVF2.0でも認められると解釈しました(強引)。

 また、電圧降下については200Vの2%である4Vを上限としたとき、こちらの最大こう長を求められるwebページによれば20Aで最大こう長は17.6m、これは今回のケースでは十分な長さなので問題なしと判断しました。

 以上より、今回のケースではエアコン配線を流用しても問題にはならないと判断。(注意点としては、この方法はエアコン用コンセントを「転用」するため既存のエアコン用コンセントはなくなってしまいます。「同時に使わないようにするから」とか言ってエアコン用コンセントを残したまま分岐するのは絶対にNGです。)

3:電設材料探しの旅と、施工

 というわけでここからは実際に電材を選定して購入し、施工していきます。ここで意外と大変なのは資材の選定。筆者は「ペーパー電気工事士」なので電材なんてほぼ知らないですし、そもそも一般向けではないですから全てを選定し終わるまで3日程度かかりました。まあ、ひたすら未来工業の電子カタログをめくり続けるのはそこそこ楽しかったですが。

3-1:屋内側配線

屋内側 モール工事

まずは屋内側。エアコン取付位置周囲は壁補強がされており、多くの柱が通っていたため隠ぺい配線は困難と判断。ケーブルモールによる露出配線を行いました。

 既存のコンセントはボックスなし工事で施工されていましたが、電線の接続はボックス内で行う必要があるため既存コンセントの上に取り付ける形で露出ボックスを取り付ける必要がありました。そこで筆者が購入したのがこちらの未来工業 モール用スイッチボックス Fタイプ

未来工業 モール用スイッチボックス Fタイプ 1ヶ用 MSB-F1 型式:MSB-F1W

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Fタイプ 説明

 この製品の優れているところはナットボックスが着脱式なので既存スイッチボックスに重ねて取り付けられる点です。要は既にある埋め込みボックスを簡単に露出ボックスに変更できるわけです(画像は未来工業カタログより引用)。

はさみ金具

 ただし、今回の場合はボックスなし工事だったのではさみ金具を別途購入。こちらの金具は仮固定ができるようになっており、はさみ金具を壁内に落っことして詰むという事故を未然に防げるので便利でした。

パナソニック(Panasonic) フルカラー はさみ金具 WN3996

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 また、モールは「たった2回切るためだけにモールカッターを買いたくはない」という理由からハサミで切断できるタイプを買いましたが、これは分割式じゃないのでVVF2.0-3cを収めるのは至難の業でした。

ELPA 切れるモール 2号 [2本用][ホワイト] 配線カバー ケーブルモール MH-CT21H(W)

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3-2:分電盤

ブレーカー

次に分電盤。既存コンセントは100Vなので200V化工事、及び200V用ブレーカーへの変更作業を前回の分電盤用避雷器取り付けの際に同時に行いました。

 なお、ブレーカーの取り付け方法については主幹1次・2次分岐や既設分電盤内側・外側・大型機器取り付けスペース利用など様々な方法が想定されています。その中でも今回用いた主幹2次分岐・分岐開閉器位置に取り付け(ガイドライン表5-5,3-A、要は普通のブレーカーと同じように設置する)が一番簡単だと思います。

 ただし、ガイドラインではこの施工方法の留意点として

  • 遮断器の温度上昇による過電流引き外し特性の変化を考慮した遮断器の選定が必要
  • EV充電専用回路地絡時の選択遮断が困難

の2点が挙げられています。

 これがどういうことかというと、まず「過電流引き外し特性の変化」については

  1. 小型ブレーカーはバイメタルの温度上昇によって過電流を検出している
  2. ここで、既設分電盤内にブレーカーを設置すると周囲の回路が出す熱放熱の悪さによってブレーカーの温度が上昇する
  3. 結果、過電流が発生していないのにブレーカーが落ちる可能性がある

という意味です。これはブレーカーが「落ちやすくなる」というわけであって「過電流が発生しているのに落ちない」というわけではないので安全性には影響を与えないと判断。

 次の「選択遮断が困難」というのは主幹2次分岐に起因する問題で、主幹2次分岐の場合はEV用ブレーカーの直近上流に主幹ブレーカーが存在するわけですが、ここで例えEV用ブレーカーを漏電ブレーカーとした場合でも万一漏電が発生した際に主幹ブレーカーでも漏電を検出するためEV用ブレーカーと主幹ブレーカーのどちらが先に落ちるかがわからないわけです。要はEV充電器で漏電が発生した場合、主幹ブレーカーが落ちて家中が停電する可能性があるわけです(専門用語で言うならば「保護協調が取れない」)。
 しかしながら、これも「ブレーカーが落ちない」というわけではないので在宅医療機器があるという方や自宅にサーバーがある「逸般の誤家庭」の皆様以外の方々にはそれほど影響しないかと思われます。

 以上の理由により、大抵の場合は通常のブレーカーと同様に施工しても問題ないかと思われるので今回もこの方法で施工しました。

 なお、ブレーカーにもいろいろと種類がありますが、20A回路の場合は2P2E 20A ELCB(0.1s・15mA)(要は200V20Aの漏電ブレーカー)がガイドラインで指定されていますので素直にこれに従いましょう。漏電ブレーカーはそこそこ高いので普通の安全ブレーカーにしたくなりますが安全対策をケチるのはご法度です。

パナソニック 小型漏電ブレーカ 電灯・分岐用 AB-2E型 2P2E 20A 15mA O.C付 安全ブレーカ同一モジュール BJS2022N

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3-3:屋外配線

 さて、いよいよ住宅から車庫への配線を行っていきます。この区間の施工で注意が必要なのが雨への対策ですが、筆者は施工経験ゼロなので結構悩みました。

 まずはコンセント設置位置の決定。筆者宅では住宅外壁から車庫まで若干の距離があるため、コンセントは住宅外壁ではなく車庫の柱に設置することにしました。なお、EVコンセントは入手性からほぼPanasonic一択でした。

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ブレーカー

 住宅外壁からの屋外配線取り出しは一般的には引き込みカバー等を用いて下向きに取り出す(雨対策)ことが多いですが、今回は配線ルートの都合から横向きに取り出したかったので未来工業の防水タイプのボックス防水コネクタを使用。

未来工業 PV4B-ANP1J 露出用四角ボックス(防水タイプ) ベージュ【取寄商品】

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 なぜか防水コネクタは10個入りのみ。2個しかいらないんだけどな…

evコンセント 設置後

 そのボックスからPF管を車庫まで伸ばして配線しました。ちなみに、PF管はPF22以上を推奨とのことなのでなぜかその辺に転がっていたミラフレキPFS22を使用。また、本来屋外配線ではこのようにボックス上側からの入線はNG(雨が入る)なのですが、配線の都合上やむを得なかったので屋外といえど屋根があってほぼ雨はかからないこと、及び防水コネクタを用いたことを考慮して問題なしとしました。

PF管 固定金具

 PF管は、このように様々な固定具が発売されているのでそれを場所に応じて用いることで割と簡単に固定できました。

ポリ台

 さらに、「面倒なので意地でも柱への穴開けはしたくない」という強い気持ちで未来工業のカタログを探しまくってポリ台なるものを発見し、これをボックスに取り付けてステンレスバンドで取り付けられるようにしたのですが…

ポリ台での取り付け

 ポリ台とスイッチボックスのねじ穴がぴったりとは合わなかったうえにコンセントの飛び出しが大きくなって見た目も悪くなったのでおすすめはしません。ちなみに、スイッチボックスはPanasonic純正のものでなくてもこちらの未来工業のやつでピッタリでした。

未来工業 露出スイッチボックス 防水コンセント用 ベージュ VE16・22 1個価格 PVR22-BC1AJ

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 そして、雨対策で最も重要と言っていいのがコーキング。筆者は不器用なので失敗する気がしてならないのですがやるしかありません。一般的なサイズのコーキング剤を買っても絶対に使いきれないので補修用の少量タイプを購入。こちらは少量かつ絞り出し器付きで専用ガンが不要なのでDIYには最適です。

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 また、このコーキング剤にはヘラが付属していますが小さくて使いづらそうですしそもそも「目地用」なので専用のヘラも購入しました。

コーキング練習

 というわけでいざコーキング施工…と行きたいところですが練習なしで行くと確実に失敗しそうなので、ちょうど手近にあった外壁見本に適当なスイッチボックスを固定して練習。「意外と行けるじゃん」ってことで即座に実際の施工に入ったわけですが…

コーキング 不足

 なんか空洞ができたりして一発で成功とはならず、継ぎ足すことに。

コーキング

 …まあ、初めてだと考えれば及第点じゃないかな。

4:施工を終えて

電線 被覆剥き

 コーキング以外にもケーブルストリッパの調子が悪くて被覆がうまくむけなかったり、VVF2.0をPF管に通線ワイヤなしで「気合い」で通したりと全体を通して結構大変な作業でした、天井付近で作業すると結構暑かったし。
 というわけで、1週間くらいかけてなんとかDIYでEVコンセントを施工して達した結論は

やっぱり俺は「ペーパー電気工事士である」

以上です。